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金沢地方裁判所 平成2年(わ)165号 判決

本籍

石川県小松市向本折町午二一六番地

住居

右同

農業及び会社役員

地嶋廣規

昭和五年二月六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官鈴木敏彦出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金二二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときには、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、農業を営むかたわら、営利の目的で継続して有価証券の売買を行つていたものであるが、所得税を免れようと企て、農業収入を減額するといういわゆるつまみ申告を行つたり、有価証券の売買取引の一部を他人名義で行つたり、株式取引にかかる受取配当金の収入を隠したり、農業収入及び有価証券売買益を他人又は架空名義を使用して預金する等の方法により所得を隠匿した上

第一  昭和六一年分の総所得金額が別紙第一、第三及び第五記載のとおり九六三四万〇〇七三円で、これに対する所得税額は五〇三二万一一〇〇円であるのにかかわらず、昭和六二年三月一四日、石川県小松市園町ホ一二〇の一所在の所轄小松税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が、一一五〇万七九一一円で、これに対する所得税額は一九七万一二〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により別紙第三記載のとおり右所得税四八三四万九九〇〇円を免れた

第二  昭和六二年分の総所得金額が別紙第二、第四及び第五記載のとおり九四二二万九四四七円で、これに対する所得税額は四八七四万〇三〇〇円であるのにかかわらず、昭和六三年三月一〇日、前記小松税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二七四万七五九二円で、これに対する所得税額は二〇万一九〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により別紙第四記載のとおり右所得税四八五三万八四〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する平成元年二月一五日付け、同年三月三〇日付け、同年四月六日付け、同年四月二一日付け、同年五月二六日付け(二通)各質問てん末書

一  地嶋和子(平成元年五月一五日付け、同月二四日付け、同年八月三〇日付け-一〇枚綴りのもの1)、地嶋広久(平成元年二月一五日付け)、吉田紀子、吉田俊、藤睦夫(二通)、中山武彦(三通)、松尾憲一郎(平成元年二月一五日付け)、米田忠蔵(平成元年二月二三日付け-検察官請求標目番号49番1)、西弘、沖田一、東出功、小村哲夫、北村和弘及び山崎健次(二通)大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(二通)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(一八通)

一  大蔵事務官作成の証明書(四通)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ各罪につき情状により同法二三八条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金二二〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 武田和博)

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